自然栽培の
≪朝日≫と≪雄町≫で醸す日本酒
NPO岡山県自然栽培実行委員会を設立以来、日本人の精神や文化に深く根ざしてきたお米を生産する私たちにとって、育てたお米を醸して日本酒を造っていただけるということは、このうえない喜びです。毎年行うお田植えの式と稲刈りの式の神事では、感謝を込めて、田んぼにお神酒として「自然栽培」のお米で醸したお酒を捧げております。
私たちが生産者の皆さまと作っているお米の品種は、≪朝日≫≪雄町≫などです。
≪朝日≫はプロの料理人たちが指名する食用として名高い品種ですが、じつは酒造りにも適しています。そして≪雄町≫は酒米として高い人気を誇る品種です。
幻のお米と
「自然栽培」
≪朝日≫と≪雄町≫は稲の背丈が高くなって倒れやすいなどの特徴があり、栽培の難しさや手間暇がかかる品種のため生産する農家が減りました。一時期はともに“幻の米”と呼ばれていました。
「自然栽培」で育てると、稲に必要な養分は自然がおのずとつくりだしてくれます。その養分は“過分ではない”ため、稲は遠くにある栄養分を取ろうと根を伸ばしていくのです。そうすると稲はしっかりとした様となり、株が強くなっているので高めの背丈も安定してきます。“朝日米、雄町米を「自然栽培」で育てる”というのは、とてもよいマッチングなのです。
知る人ぞ知る逸品
≪朝日≫とは?
お米には昔から「東の亀の尾、西の旭」という言葉があり、「旭」は美味しいお米の代表格。この2種類を親として、ほとんどの後継種が作られました。≪朝日≫は、「旭」の子で、岡山農業試験場が純系淘汰を行って確立した、全国で唯一残っている旭系。瀬戸内の温暖な気候風土を持つ岡山だからこそ育つことができた人工交配していない稀少な品種で、コシヒカリやササニシキのご先祖です。
≪朝日≫は、もち米と交配していないことから、モチモチとした食感とは異なり、ねばりは少なめでふっくら。ほのかな甘みが上品で、奥ゆかしい旨味があります。寿司職人や高級料亭の料理人たちが指名する品種として知られています。食味会においても、お米を知り尽くしたプロフェッショナルたちから賞賛をいただいている、知る人ぞ知る隠れた逸品なのです。
≪朝日≫を使った日本酒の特徴は
- ●穏やかな香り
- ●口当たりがよく、ふわりと口に拡がる旨み
- ●スッキリとした綺麗な味と上品な含み香
- ●きめ細かい酸のある凛とした味わい
オマチストが愛してやまない
≪雄町≫とは?
≪雄町≫は、1859年に岡山で偶然発見された、現在の酒米のルーツとされる品種です。岡山原産の品種だけあって、岡山がもっとも栽培に適した気候風土で約9割を生産しています。醸すとふくよかでお米の旨みをしっかりと感じられる味わいに仕上がることから、酒米の最良品種と賞される一方で、軟質米ならではの米の溶けやすさから扱いが難しく杜氏泣かせの酒米ともいわれています。栽培するのも難しくかつて“幻の米”と言われていたことも相まって、“オマチスト”と呼ばれる日本酒愛好家たちの心を惹きつけてやみません。肥料・農薬・除草剤に頼らない「自然栽培」の≪雄町≫は特に稀少です。
≪雄町≫を使った日本酒の特徴は
- ●丸みのあるふくよかさ
- ●長い余韻
- ●昔の米らしい野生味
- ●熟成で化ける旨味
- ●幅のある複雑な味わい
「自然栽培」ならではの日本酒
杜氏のかたにうかがうと、日本酒は酸とアミノ酸のバランスが同じくらいがよいお酒とされているけれど、「自然栽培」のお酒の場合はアミノ酸が多いとのこと。けれどそれを“雑味”に感じず、美味しい味わいになるそうです。自然栽培の稲の根は窒素分だけではなくさまざまな養分を吸収するので色々な味が感じられるのではとのこと。ワインには味わいを表現する様々な言葉がありますが、微生物たちに育まれた「自然栽培」の日本酒にも自然栽培ならではの深い魅力がありそうです。
私たちの「自然栽培」のお米をごはんとしてだけでなく、お酒という嗜好品としても味わっていただくことで「自然栽培」というものを身近に感じていただけたらと願っています。
それでは、NPO岡山県自然栽培実行委員会に賛同してお酒を造ってくださっている地元岡山の酒造会社さまの銘酒をここにご紹介したいと思います。国内外のコンテストや日本酒の品評会において数々の高評価を獲得している個性豊かな「自然栽培」のお酒を、ぜひ味わっていただき、飲み比べて楽しんでいただけましたら幸いです。
酒造会社の紹介&お酒の紹介
これまでに
コラボレーションを
おこなった酒造様
菊池酒造 × 自然栽培
菊池酒造
×
自然栽培
『奇跡のお酒』シリーズ
純米大吟醸≪雄町≫、純米吟醸≪朝日≫≪雄町≫、純米酒≪雄町≫、玄米酒≪朝日≫
「自然栽培米≪朝日≫のごはんは、すっきりとした旨さが特徴です。『奇跡のお酒』もその旨さをそのまま味わっていただけるように、とても丁寧な造りを心がけました」(蔵元杜氏の菊池東氏)。
●女性のソムリエたちが審査する「フェミナリーズ世界ワインコンクール2022」で『奇跡のお酒純米吟醸 朝日』が金賞を受賞。
●フランス人のみで審査を行う日本酒コンクール「Kura Master 2022」で『奇跡のお酒 純米吟醸 雄町』が金賞を受賞。
この他にも『奇跡のお酒』シリーズは国内外の数々の栄誉に輝いています。
菊池酒造
明治11年(1878年)創業。「伝統を育み、未来に伝えるこだわりの美酒づくりを」をモットーに、一度飲んだら忘れられない酒を造りたいという、菊地酒造の社長で蔵元杜氏でもある菊池 東(とう)氏。倉敷管弦楽団の常任指揮者でもあり、酒造りの期間、蔵の中には自身が厳選したモーツァルトの音楽が流れ、微生物たちも心地よく活動しています。菊池氏は、「自然栽培」に賛同しNPO設立時から副理事長を務めてくださっています。
菊池酒造株式会社 岡山県倉敷市玉島阿賀崎1212 TEL 086-522-5145
宮下酒造 × 自然栽培
宮下酒造
×
自然栽培
『天地のかなで』
純米大吟醸
『天地(あめつち)のかなで』純米大吟醸≪朝日≫
天地(あめつち)とは大自然そのもの。「自然栽培」の田んぼでは、稲とともに多様な命がハーモニーを奏でています。すべての命の恵みへの感謝の想いで醸したお酒です。
●備中杜氏自醸清酒品評会(2022年5月) 第4位を受賞。
宮下酒造
大正4年(1915年)創業。宮下酒造は、日本酒品評会で代表銘柄が9年連続で金賞を受賞するなど、日本酒ファンや日本酒の醸造業界ではよく知られる岡山の銘酒造です。
宮下酒造株式会社 岡山県岡山市中区西川原184 TEL 086-272-5594
渡辺酒造本店 × 自然栽培
渡辺酒造本店
×
自然栽培
『沙々 50』
渡辺酒造本店
明治42年(1909年)創業。渡辺酒造本店は、現在でもなまこ壁の酒蔵、レンガを積み上げた煙突、店頭に下がる酒林(杉玉)など、昔ながらの造り酒屋の姿そのままを残す風情ある佇まいです。四代目蔵主の渡辺英気氏は手作りの地酒にこだわり、岡山のお米と高梁川の伏流水、そしてできるだけ手をかけてお酒づくりをすることが信条。備中杜氏の技を駆使して、手間のかかる伝統的な和釜槽絞りをおこなっています。
有限会社 渡辺酒造本店 岡山県倉敷市連島町亀島新田170 TEL 084-444-8045